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スペインの光と影,檜山健三「客を待つゴンドレロ」P12号油彩,東京芸大小磯教室,ベニスの運河
一方、西洋美術の日本社会への浸透は、その社会政治的な動向と一致している。第二次世界大戦が終わるとそれは日本社会の集団意識を変えることとなる。
戦後、日本人の抱いた「世界を感じる」方法は、ます何よりも、それまで彼らに関係がなく理解するのも難しいとされていた他の美術の公理-表現方法-を受け入れることであった。
云ってみれば、それまでとは美術の世界の事象が、逆になってしまったのだ。モシハポニスモ(日本趣味)というものが、19世紀末のヨーロッパ人による東洋美術の発見であったならば、今度は日本社会が現代を表すものとしてのエウロッペイスモ(西洋趣味)を取り入れることとなったのである。
また、日本が経済的に覇権を手にしたことは「メイドインジャパン」製品を国際市場の主役にすることに役立ったばかりでなく、それによって多くの新世代の日本人は視覚的な面だけでなくより広い世界を捉えることを可能にした。その結果、他の匡と同様、東京でも西洋絵画の重要な展覧会が開かれ始めている。フランス印象派、ドイツ表現派、それにピカソ、ミロ、ダリ、ファン・グリス、タピエス、あるいはアントニオ、クラベー(彼の作品は、その最初の東京への旅以来、ハポニスモの影響を受けている)といったスペインの大画家達の名が大きな美術館同様個人画廊でも魅力あるポスターを飾っている。 そうした新しい美術感覚(動向)への道を拓いた美術館、あるいは美術の普遍性を目指して設立されたフジ美術館のようなものも既に生まれてきている。
70年代、新しい世代の画家や彫刻家達がヨーロッパ芸術の知識に無関係でなかったことがすぐに明らかになった。 西洋美術の示唆に富む課題に彼らの芸術的感性は敏感に反応した。若手の芸術家のアラカワ・シューサク、ミウラ・ミツオ、クサマ・ヤヨイなどが今日既に国際的存在になっている。前者の二人は抽象的表現から研究を、三浦は魔術的レアリズムの表現をしばしば行っている。檜山健三も亦このような西洋的表現の影響を受けた代表的作家である。 檜山健三は鋭い観察眼を持った疲れを知らぬ旅人で、再々全ヨーロッパを巡り歩くのみではなくそれを描いてきた。彼はヨーロッパを東洋的感性と西洋的「技法」で描いてきた。彼の色に対する鋭敏な目は、風景に着目し、彼の特技ともいうべき職人のていねいさで、自然の形や色といった外見ばかりでなく、その本質をとらえて描き出している。
檜山健三は最初彼の絵を、1971年私にみせてくれた。以来25年が経つが、彼は日本で展覧会を開く度に、その作品をカタログや絵はがきで知らせてくれた。また、彼がスペインを旅する度に、その最近作を見せてもらうという光栄に浴したが、そ熟味を増した芸術は個性的になり、やがて確固たるものになってゆくことを知り、喜ばしく思った。彼の描く風景は、いかに周りにある余分なものを取り去って、光と色と形そのものを描いているかを確認することが出来、それはまさに自然そのものの本質のみを描き出している。
彼は自然の静寂を描いている。静かな自然自体、それは人間とは無関係である。なぜなら檜山健三の絵の中で何か特別に強く注意を惹くものがあるとするならば、それは人物が描かれていないことであるー例外もあるが、例外だからいっそう印象的であるー。
即ち、彼の描く舞台に於いて、人物はいつも無言で孤独である。普通、彼の描く舞台には人物はいない。多分曾てはいた、又それまでいたのかもしれない。彼の風景の中にあるものは、人間が残したその形跡―村や町の建造物、田園など―それは、常に誰かそこを通った人の形跡であるが、その人はもはやその場にはいないのだ。
だから我々は檜山健三がもう人間を描くのを止めてしまったとさえ考える。彼の絵画にとって人間は必要な要素ではない。彼は空気、形、色を描く。風景が持つ静けさを妨げるどのような物も人も欲しくないように思われる。二次元のカンバスの中に繊細に捉えられた清明な大気をこわすなにものも欲していないようだ。風景は風景そのものとして存在する。我々鑑賞者にとって興味のあることはその孤独なる静寂さが造形的美しさにあふれいることを知ることにある。
[マヌエル・アルセ]
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商品説明
スペインの光と影,檜山健三「客を待つゴンドレロ」P12号油彩,東京芸大小磯教室,ベニスの運河
檜山健三先生は1932年茨城県に生まれ、東京芸大油画専攻小磯教室で学びました。親兄弟皆医者で檜山先生だけが芸術の道を選んだそうです。
卒業後は無所属の道を選び頻繁にスペインに滞在し制作されました。
1989年に梅田近代美術館で開催された「追悼・小磯良平先生を囲む作家展」では昵懇の巨匠たちと新制作創立メンバーと芸大小磯教室の門下生たち、島田章三、脇田和、大沼映夫、石川滋彦、伊藤清永、野田弘志、彼末宏、絹谷幸二、三岸節子、舟越保武、猪熊弦一郎、笠井誠一、小松崎邦雄ら41名が招待され檜山先生のそのひとりです。
その作品はご夫妻で幾度も訪れたスペインの昼下がりのまどろみや集落の光と影を感じやかな色感としゃれたフォルムで人気を博しました。
活動は出身県にある伊勢甚の美術サロンにて隔年開催を中心に泰明画廊さん、梅田画廊さんなど著名画廊や全国の百貨店美術部で開催されました。
エリアがどこであってもスペインで長く研鑽を重ねた影響か、どの作品もスペインの光と影の表現、微笑んだような大気のやわらかさ、何十時間もなにもせず居られるようなゆるやかな時の流れを感じる大らかな作風と気品が魅力の作品たちです。
昭和の美術業界絶頂期はもう間違いなく主たる市場はオークション会社や画廊ではなく美術部でありそのサロンに年間通して断トツ上流の客層や静謐で品のある設えの内装にぴったしの作風と思います。いずれもすべてが人生最良の瞬間や命の輝きを切り取ったようなその場その場の胸のすく絶景を描いております。
花畑、パーラー、海外の公園、欧州の海辺、陽光の市街地どれも本当に素敵です。
本作は運河のゴンドラ乗り場のまさに絵になる情景です。木枠に張った作品のみで額縁はございません。
ご検討ご入札の程、どうぞよろしくお願い申し上げます。
1932年茨城県石岡市に生まれる。
1951年水戸一高卒
1956年東京芸術大学(小磯教室)卒業。
1970年スペインサンタンデルにて個展。
1971年みゆき画廊にて個展。
1973年大阪美工画廊にて個展。
1975年伊勢甚百貨店にて個展。泰明画廊にて個展。大阪梅田画廊にて個展。
1976年泰明画廊にて個展。
1977年泰明画廊にて個展。
1978年泰明画廊にて個展。
1980年泰明画廊にて個展。
1981年上野松坂屋にて個展。現代美術の世界(大橋嘉一コレクションから)出品。奈良県立美術館
1982年町田小田急にて個展。
1983年上野松坂屋にて個展。
1984年町田大丸にて個展。
1985年上野松坂屋にて個展。
1986年伊勢甚百貨店にて個展
1987年上野松坂屋にて個展。
1988年伊勢甚百貨店にて個展。伊勢甚は以降隔年個展開催。
1995年スペインサンタンデルにて個展。
無断転載禁止。
参考ご評価 3号ぼたん。4号祭の。6号しゃくなげ。10。12号アンダルシアの。12号アルプスの。15。15。20号アルプスの。20号チューリップ。30号ベルンの。40号丘の上の白い。(伊勢甚美術工芸サロン価格)
マヌエル・アルセ
フランス印象派による日本画の発見は、(版画を通じて彼らは知るのであるが)1862年頃パリに於いて何人かの東洋美術愛好家(モネ、ドガ)がゴンクール兄弟、ゾラ、ブルティのような作家達、それに出版者、アルイシャルバンティエのような偉大な収集家に呼びかけて、グループを形成した。日本絵画の賞賛が最高潮になるのは1867年、パリ万国博に最初の日本館が出来た時で、この年にはセーブル(パリ南西武セーヌ河沿いの町、セーブル焼きで知られる)にあった有名な磁気館の館長を中心としてジングラール日本協会が設立されている。
一方、西洋美術の日本社会への浸透は、その社会政治的な動向と一致している。第二次世界大戦が終わるとそれは日本社会の集団意識を変えることとなる。
戦後、日本人の抱いた「世界を感じる」方法は、ます何よりも、それまで彼らに関係がなく理解するのも難しいとされていた他の美術の公理-表現方法-を受け入れることであった。
云ってみれば、それまでとは美術の世界の事象が、逆になってしまったのだ。モシハポニスモ(日本趣味)というものが、19世紀末のヨーロッパ人による東洋美術の発見であったならば、今度は日本社会が現代を表すものとしてのエウロッペイスモ(西洋趣味)を取り入れることとなったのである。
また、日本が経済的に覇権を手にしたことは「メイドインジャパン」製品を国際市場の主役にすることに役立ったばかりでなく、それによって多くの新世代の日本人は視覚的な面だけでなくより広い世界を捉えることを可能にした。その結果、他の匡と同様、東京でも西洋絵画の重要な展覧会が開かれ始めている。フランス印象派、ドイツ表現派、それにピカソ、ミロ、ダリ、ファン・グリス、タピエス、あるいはアントニオ、クラベー(彼の作品は、その最初の東京への旅以来、ハポニスモの影響を受けている)といったスペインの大画家達の名が大きな美術館同様個人画廊でも魅力あるポスターを飾っている。
そうした新しい美術感覚(動向)への道を拓いた美術館、あるいは美術の普遍性を目指して設立されたフジ美術館のようなものも既に生まれてきている。
70年代、新しい世代の画家や彫刻家達がヨーロッパ芸術の知識に無関係でなかったことがすぐに明らかになった。
西洋美術の示唆に富む課題に彼らの芸術的感性は敏感に反応した。若手の芸術家のアラカワ・シューサク、ミウラ・ミツオ、クサマ・ヤヨイなどが今日既に国際的存在になっている。前者の二人は抽象的表現から研究を、三浦は魔術的レアリズムの表現をしばしば行っている。檜山健三も亦このような西洋的表現の影響を受けた代表的作家である。
檜山健三は鋭い観察眼を持った疲れを知らぬ旅人で、再々全ヨーロッパを巡り歩くのみではなくそれを描いてきた。彼はヨーロッパを東洋的感性と西洋的「技法」で描いてきた。彼の色に対する鋭敏な目は、風景に着目し、彼の特技ともいうべき職人のていねいさで、自然の形や色といった外見ばかりでなく、その本質をとらえて描き出している。
檜山健三は最初彼の絵を、1971年私にみせてくれた。以来25年が経つが、彼は日本で展覧会を開く度に、その作品をカタログや絵はがきで知らせてくれた。また、彼がスペインを旅する度に、その最近作を見せてもらうという光栄に浴したが、そ熟味を増した芸術は個性的になり、やがて確固たるものになってゆくことを知り、喜ばしく思った。彼の描く風景は、いかに周りにある余分なものを取り去って、光と色と形そのものを描いているかを確認することが出来、それはまさに自然そのものの本質のみを描き出している。
彼は自然の静寂を描いている。静かな自然自体、それは人間とは無関係である。なぜなら檜山健三の絵の中で何か特別に強く注意を惹くものがあるとするならば、それは人物が描かれていないことであるー例外もあるが、例外だからいっそう印象的であるー。
即ち、彼の描く舞台に於いて、人物はいつも無言で孤独である。普通、彼の描く舞台には人物はいない。多分曾てはいた、又それまでいたのかもしれない。彼の風景の中にあるものは、人間が残したその形跡―村や町の建造物、田園など―それは、常に誰かそこを通った人の形跡であるが、その人はもはやその場にはいないのだ。
だから我々は檜山健三がもう人間を描くのを止めてしまったとさえ考える。彼の絵画にとって人間は必要な要素ではない。彼は空気、形、色を描く。風景が持つ静けさを妨げるどのような物も人も欲しくないように思われる。二次元のカンバスの中に繊細に捉えられた清明な大気をこわすなにものも欲していないようだ。風景は風景そのものとして存在する。我々鑑賞者にとって興味のあることはその孤独なる静寂さが造形的美しさにあふれいることを知ることにある。
[マヌエル・アルセ]
小磯良平
檜山君は泰明画廊で二回目の個展を持たれる様である。毎回の個展を見て、矢張り回ごとに構図は適格であり技法は益々さえて来ている。檜山君独特の画面処理が観る人にいい印象を与えている。それはあくまでも檜山君の風景画である。私も楽しみに待ってる一人である。75年個展
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